小花美穂「アンダンテ」を読んで


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僕が小花美穂の作品に出会ったのは94年の高校3年生の頃で、
ひょんな事から「この手をはなさない」(94年集英社りぼんマスコットコミックス全2巻)を友人から薦められた事だった。
暗い過去を持つ恒と由香子の恋愛模様は男性の僕からすると辛い(というよりイタいだろうか)のだけど、
ただ時折見せる登場人物らのコントのような演劇芝居のような掛け合いは面白くてハマっていた。
いま考えてみると、小花美穂の作家性のひとつとして、登場人物の影と大袈裟ともいえる登場人物の演技が、
僕の心を掴んだ要因かもしれない。
僕は決して小花美穂の熱心なファンではなかったが、新しく単行本が発売されると手にとって読んでいたし、
大部分の小花美穂ファンもマンガ愛好家も、彼女の作家性に惹かれて作品を読んでいたと思う。
特に「こどものおもちゃ」(94年集英社りぼん連載)はアニメ化もされ、社会的ブームを起こしたといっても過言ではなく、
特に週間少年ジャンプが653万部という異常な発行部数を達成しているマンガ熱の中で、
90年に崩壊したバブルが市民レベルで実感し始めた93年頃に、
それに伴う社会不安から企業、家族、学校の崩壊が如実に現れ、
小花美穂が作品に描く登場人物や世界観というのは時世に非常にマッチした内容で、
その内容こそが多くの共感のひとつを呼んだのだろう。


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