山下和美 「カーニバル」 を読んで


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山下和美を音楽マンガという枠の中で語る時、一番初めに取り上げる作品は何にしようか大変迷った。
僕は山下和美の作品は大好きで、全ての作品を目は通しているし、可能な限り連載雑誌を購入して読むように努めている。
特に山下和美を知る事になった「天才柳沢教授の生活」は、多くのエピソードで感動して泣くことが多いし、
また彼女の音楽知識は本当に深くて登場人物や音楽的内容のエピソードを取り上げた時「この人は本当に音楽を聴くのが好きで、
多分楽器も多少は弾けるんだろうな」って思いながら読んでいます。

僕が山下和美を音楽マンガという枠の中で語る時に迷った要因は、
「天才柳沢教授の生活」の音楽エピソードや「ゴースト・ラプソディー」「ROCKS」という作品などもあったからです。
いや、本来であれば洗練された上記の作品を取り上げた方が楽だったかもしれないし、
僕自身も特に好きな作品だから語り易かったかもしれない(逆に大好きだから語りにくいけどw)。
だけど、そうではなくて彼女の初期作品である音楽マンガ「カーニバル」(講談社漫画文庫)を取り上げ、
いずれ機会を作って年代別にその他の作品を語っていきたいと思っている。

1980年の週間マーガレットに投稿作品「おし入れ物語」でデビューしてから、
二作品目の連載作品となる「カーニバル」(初出82年38号〜83年42号週間マーガレット)の物語は、
暴行事件で服役していた人気ロックグループ”カーニバル”のボーカル&ギターの重里がバンドに戻ってくるところから始まる。
重里の代わりを務めていたボーカル&ギターの久美は正式にメンバーとなり、
服役する前に重里と付きあっていたが、今では反発しあうばかりだった。
そんな中、重里の代わりを務めていたもう一人のメンバーだった、ギターの石垣が薬漬けになって久美に付きまとうようになる。
久美はファンの女の子らからの陰口や石垣からの暴行などを受けるが、
その脅威から重里に守られる事と自分自身の気持ちを再発見することによって、
”カーニバル”のメンバーとして前へ進んでいくと同時に重里と再び恋人同士となるラブロマンス。

1982年の週間マーガレットで連載されていた作品にしては、内容が大人っぽくて少女マンガというよりもヤングレディースという雰囲気が強い。
初期作品の頃から彼女の作風が子供向きではなくて、少女の課題よりも青年の課題を主張していることが、
登場人物の年齢や抱えている問題を見てもお分かりいただけると思う。


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