松本大治 「DESPERADO デスペラード」 を読んで


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今回は、特に週間少年マンガ誌で確立した王道とも言えるインフレするバトルシステムや、
1960年前後を境にマンガ家白戸三平をはじめに達成したマンガが架空性から実名性へ変化するという
実在の歴史的人物や事件の強調によるリアリティの獲得からの説得力という伝統、
そして子供が読むマンガの少年に対しての説得力を説明してみる。

はじめに週間少年マンガ誌で確立した王道とも言えるインフレするバトルシステムを音楽マンガに変換した様子を見てみよう。
どの物語マンガにも当てはまる事なのだが、登場人物らの能力や実力が上がったとわかりやすく説明するには
登場人物らを取り巻く環境や世界のレベルそのものを引き上げる事である。
例えば、ある目標を果たすために主人公が一人の強敵を倒したとする、
そしたら倒した敵に勝る新たな強敵が現れるが苦難を乗り越えて倒し、
またそれに勝る強敵に出くわしてしまう。
味方も敵も、それを取り巻く世界そのものもレベルが上がってインフレ状態になる。
このインフレ状態が”更に強い、更に面白い”などを追求する読者にとって気持ちのいい状態であり、
少年誌が持つテーマである成長課題というのを登場人物自身が何らかのカタチで強くなって成長を象徴しているので、
読者である進行形で成長し続ける少年にとって共感性が強く理解されやすいのである。
これはスポーツマンガやバトルマンガでは伝統芸なのだが、これを音楽マンガでも当てはめることが出来たのだ。

単行本1巻で主人公の椎名がギターを始めて3週間で黒須と共に文化祭のライブに出演。
単行本2巻で新メンバーのサラを加えて遊園地での演奏バイトの軌道が乗る。
単行本3巻でメジャーを目指し夢のライブハウスでの演奏。
単行本4巻でドラマの主題歌をめぐってのコンクール。

この間に様々なドラマはもちろんあるのだが、1巻に必ず最低ひとつは目に見える目標が存在している。
実体の無い音を扱う音楽マンガに奏者の音楽的なレベル向上を読者にわかりやすく説明するには、
技術的に難しい奏法や難曲を演奏させるしかない。
また奏者の成長を相対的に表すには演奏する場所の世界をステップアップさせるしかほかないのだ。


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