柊あおい「銀色のハーモニー」を読んで


僕が小学生だった80年代の頃はあまりマンガを読んでいなかったので、
今で言う大御所やベテランといった作家たちの作品はリアルタイムで知らないのが多い。
今考えると、外で遊んでばかりいたこともあったし、
本といっても読んでいたのは子供向けの小説ばかりで、
テレビもあまり今と違って観ていなかったのでアニメにも馴染みが少なかった。
しかし、その反動はいつか来るわけで、
中学を卒業する頃にはマンガとアニメに目覚める事になるのだが、
それは別の機会に書くとしよう。

柊あおいと言えば、おそらく多くの人が「耳をすませば」と答えるだろう。
それもそのはずで、あのスタジオジブリが映画化したマンガ原作だからだ。
映画化された95年、18歳だった僕は思い返してみると当時付き合っていた彼女と一緒に
映画館へ観に行った懐かしい記憶がある。
中学生の主人公たちが織り成す純粋な恋模様に気恥ずかしさを感じながらも、
まだ僕自身が18歳という年齢もあったのだろう、
その純粋な恋愛に僕自身の恋愛の理想と重なって、
とても楽しんで観ていたようにも思える。
余談だが、僕は公開されていた本編よりも当時の世相が色濃く反映されていた
同時上映の実験劇場「On Your Mark」の方が好きだった。
ただ考えてみれば、公開が11年前(06年11月現在)ながらも
コンスタンスに日本テレビの金曜ロードショーで放送されているので、
柊あおいという作家の知名度よりも作品名の知名度の方が高いかもしれない。
そうすると、マンガファンから見れば柊あおいと言ったら「星の瞳のシルエット」だろう。
85年からの初連載作品ながらも、
柊あおいの連載作品の中で最も長い約5年の連載期間となり、
彼女の看板作品と言っても過言ではない。
柊あおいが描く可愛らしくて小躍りしたくなるような、
その中でちょっと心がズキンとする少女らと少年らの淡い恋愛模様は、
掲載雑誌「りぼん」を読むような年齢ではない男の僕からすると正直なところ気恥ずかしいのだが、
彼女が描くとてもロマンチックな作品は僕の心に素直に響いてくる。
そんな彼女の作風が顕著な作品が「星の瞳のシルエット」、「耳をすませば」に続く
90年からの連載作品「銀色のハーモニー」だ。


次へ

inserted by FC2 system