はじめに


音楽マンガを読んで感じた事は「どうして、ここまで音楽マンガが受け入れられるようになったのか?」だった。

21世紀にはいる前、まだ今(2006年8月現在)のように少年マンガ誌では「BECK」、
少女マンガ誌では「のだめカンタービレ」が大ブレイクし、
それに続く音楽を題材に扱うマンガが増え、音楽マンガというジャンルが確かな実感として確立するより以前は、
「音楽を題材にしたマンガは売れない」と言われ続けてきた。

「売れない」と言われ続けてきた要因は、奏者が自身もしくは楽器から音の羅列を発信して、
聴き手の耳から音を聴き取り、音の情報を得て自身の脳で処理して感動する音楽を理解するという基本的構造と、
視覚情報のみでしかマンガの感動を読者に伝えられない基本構造といった、聴覚情報と視覚情報というメディアの決定的な溝から、
「売れない」と言われ続けてきた根底的な要因だと思う。

同時に作家自身もしくはそれに携わる関係者の多くが、楽器経験や音楽的な嗜好、
より具体的で専門的な知識や教養といった偏見的とも受け取れる自虐的意識、被害妄想的発想から、
「売れない」という無意識的な恐怖感から来る固定観念が生まれてしまったのかもしれない。

しかし、それは同時に、読者自身も音楽を題材にしたマンガを読んでも、音楽に対する理解や、マンガに対する理解といった、
音楽とマンガの共通的な世界観や運命共同体の様な共通認識といった概念が低かったからこともあり、
読者自身もそのような固定観念が多少なりとも含まれていたと思う。

だが、本当に戦後の日本から目まぐるしい発展を遂げたマンガの中で、音楽を題材にしたマンガはつまらなかったのだろうか?

そして、音楽を題材にしたマンガは、現実社会とどのような関係を平行して発展してきたのだろうか?

ここのページで、ゆっくりと時間をかけながら筆を進めていきたいと思う。


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