北条司 「少年たちのいた夏 Melody of Jenny」 を読んで


北条司といえば「CAT’S EYE」「CITY HUNTER」が代表作で、とても艶っぽい大人の女性がたくさん出てくる、
ほんのちょっぴりエロティックでコミカル、ハードボイルドな男の子の心をくすぐるスピーディーなマンガがとても印象的だ。
かくいう僕もCITY HUTERにはハマって、コルトパイソンのモデルガンを買ったり、ジャケットを着たりもした記憶がある。

北条司は「CITY HUNTER」の連載を終えてから、北条司らしからぬ戦後三部作というべき短編戦争マンガを描いている。
彼がどのような心境でこれらの作品に手を出したかは「少年たちのいた夏Melody of Jenny」の文庫版P73にこう書かれている。
「戦争物がずっと描きたかった。当時のジャンプ編集長と正月にわが家で酒を飲みながら『戦後50年という区切りの年だし、ジャンプでもそういう話、やらないんですか』と話してて、実現したシリーズ。〜後述略」
北条司も漫画家として、読者に歴史というなにかをずっと表現したかったのかもしれない。
そして週間少年ジャンプというのも、時によってはそういう役割を負ってもいいのではないかというやや実験的な作品であり、
必ずしも大きな声ではないが、作者と編集者の意気込みというのが感じられる作品たちである。

今回取り上げた作品は音楽マンガではなく、戦争マンガだ。
ただ、その中に取り上げられた人と人とを繋ぐための媒介として、木の横笛が使われたのはとても印象的であり、言語や目の色などではなく、
誰しも共通で平等な音というモノで共同体を構築していくというのは、当時の読者だった青年になったばかりの僕でさえも、
なにか世界が果てしなく広いものだと感じさせてくれた。
あらすじとしては太平洋戦争時に東京にいる親に会うため、学童疎開から抜け出した少年達と、
途中にばったり会ってしまった一人のアメリカ人との交流と儚さを描いている。


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