岩田康照「MAD JAM」を読んで


さて、このマンガが連載されていた96年と97年をまず思い返してみて下さい。
僕は97年には市ヶ谷にある通称”黒ビル”と呼ばれるレコード会社で勤めていました。
(「MAD JAM」に登場する音楽プロデューサーの青木が所属するレコード会社のモデルだと思います)
世間的には96年と97年はどのような年だったでしょうか?
89年に景気が後退しバブル経済が崩壊し始め、
市民レベルで景気不安が確実に体感し始めたのは就職氷河期が起こった93年以降だと言われています。
特に景気不安というそれを否応無しに国民全体が実感したとされる事柄は
97年に消費税が3%から5%に引き上げられた事と金融機関が次々と破綻した事ではないでしょうか。
マンガの世界でも、週間少年ジャンプが95年に653万部という異常な発行部数を果たし
世間とは逆行してマンガバブルを謳歌していましたが、97年には230万部まで部数を落とし、
マンガバブルもその年には崩壊し、
これを機に現在では”活字離れ”ならぬ”漫画離れ”という言葉が生まれてしまいました。

これだけでも世間がどれだけ不景気に悩まされたことがわかります。

簡単に連載当時の社会情景を書いてみましたが、
作品に反映されているでしょうか?
いや反映されていないでしょう。
このマンガには不景気なんて言葉は存在しません。

なぜならば、これは”馬鹿マンガ”だからです!

音楽マンガなのに、無駄に喧嘩をしているのだ!
僕は今まで多くのステージをこなしてはいるが、
殴り合いをしている現場なんて一度たりともお目にかかったことがない。
そもそも殴り合いする奴はキャラクターとして有名になっても、
音楽家としては大成しないのが常である。
しかし、そんな実世界のことなんてどうでもいいのだ。
これはマンガなのだ。


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