紡木たく 「机をステージに」 を読んで


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ここで難しいのはどんな音楽を演奏しているのか?ということである。
もし、僕が今現在、高校生だったとするならば”マーガレット”というバンドが、
思春期の少年が抱える問題意識ゆえに僕の耳に音楽を響かせていただろうか?
これは結構大事で今の若者がこの物語で鳴らしている音楽を認識できるマンガなのか?という裏返しでもある。
(同時に共有できる学園マンガなのか?)
はっきり言ってしまうと、この「机をステージに」連載1年前の84年にチェッカーズがブレイクしはじめ、
”マーガレット”というバンドの編成を見るとそれを垣間見ることが出来る、
と同時に”マーガレット”という演奏パフォーマンスを読み解くとBOØWYの演奏パフォーマンスにも似ている様でもあり(初期のBOØWYは6人だった)、
両者(現実も漫画も)のバンドが鳴らしているサウンドも当時の音楽シーンを知っていれば容易に想像することが出来るから、
時代の流れゆえに作者と読者の暗黙の了解というのが成立し、サウンドが読者の耳に届いたのかもしれない。
(それでもチェッカーズ、BOØWY、尾崎豊という組み合わせは当時からするとある程度の音楽好きでないと共有できないかもしれない)
また、同じ時期に尾崎豊も全国区に知名度が知れ渡る頃でもあり、
この頃の少年少女が抱えていた問題意識や内向意識を歌詞やロックというカタチで表現する
壊れやすい10代の代弁者も実際にいたという事も留意すべきで、時代からも求められていた頃だった。

もう一言書かせて貰えるならば、このシリーズを通してボーカルの高屋恵がマイクに向かって歌っているシーンが皆無に等しい。
(P26・119で申し訳ない程度にマイクに向かっているシーンがあるが…。)
だからバンドが演奏しているシーンがあっても、演奏している最中に歌っているシーンが無いので、
なかなか音楽が聴こえてこない、見えてこないという難点がある。

その点を考えると、大人からの反発という意味でバンドが取り上げられており、漫画の軸となるべく物語構成でありながらも、
面白いことにボーカルがマイクに向かっているシーンが少ない代わりにバンドパフォーマンスが前面に押し出されているというのは、
音楽マンガを通して見ていくと特筆すべき点であり、面白い作品でもある。


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