山本おさむ 「Hey!!ブルースマン」 を読んで


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山本おさむは現在連載中(06年5月現在)のも含め3本の音楽マンガを手がけている。
ひとつは「遥かなる甲子園」連載終了後に手がけた聴覚障害をふたたびテーマにした
「わが指のオーケストラ」(秋田書店・ヤングチャンピオン・91年)で、このマンガを読んだときの気持ちを、
誤解を恐れずに書くならば山本の執念というか怨念とも言い過ぎではない熱気には圧倒され、
身震いしながらマンガから発せられる言葉と音楽を感じ取っていた。
それから、現在連載中の「天上の弦」(小学館・ビッグコミック・03年)は
「東洋のストラディバリウス」と呼ばれる名器を作り上げたヴァイオリン製作者である韓国人陳昌鉉氏の波乱に満ちた半生を綴った作品で、
山本の真摯で実直な態度はナショナリズムも含めて音や言葉に対する信頼というかエネルギーを感じる事ができるだろう。
そして、今回取り上げる作品「Hey!!ブルースマン」(講談社・モーニング・04年)だ。
こうして見ると1969年に雑誌COMにて作品が掲載されてから非常に長いキャリアの中で、
3本以上も音楽をテーマのひとつとして盛り込んだ作品を世に送り出した作家は稀有だと思う。
またどの作品も情熱的で特に「わが指のオーケストラ」は必読の価値がある。
今回、作品を取り上げるうえで「わが指のオーケストラ」と非常に迷うところではあったが、
ここではあえて「Hey!!ブルースマン」を取り上げ、登場している主な人物らはミュージシャンだけれども、
そこらへんにいるおっさんやおばさんの風情や哀愁、
いや本当は心の奥に抱えているふつふつと燃え滾るエネルギーというのを語っていければと思う。


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